ホッキョクグマの人工授精

上野動物園のホッキョクグマ、デアとイコロは現在16歳。
ホッキョクグマでは、赤ちゃんを産むには少し体に負担がかかりやすい年齢にあたります。
妊娠や出産は不可能ではありませんが、もし妊娠しているとすれば初産。母体への負担は若い頃よりも大きくなります。

繁殖には、相手のイコロも関わります。
人工授精や検査には全身麻酔が必要で、イコロにも同じように体への負担がかかります。
麻酔は一度きりであれば安全にできることが多いですが、何度も続けば回復に時間がかかったり、体調への影響が心配になります。

北米や欧州の記録では、初産の平均年齢は約9歳(Curry et al., 2015)、出産のピークは6〜12歳ごろ。
そして近年では、15歳を過ぎて初産経験がない個体は、繁殖よりも健康維持を優先する方針が増えています。

一方、日本では「高齢でも技術を使えば成功する可能性がある」と考えられ、繁殖が試みられます。
希少種の繁殖は話題性があり、園のPR効果も大きいためでしょうか。


しかし、その一方で、2頭がこれからも元気で暮らせる時間も大切だと思います。
繁殖のチャンスは限られていますが、健康に過ごす時間もまた限りがあります。


命をつなぐことと、
その命を守ること。

どちらも大切にできる選択を、望んでいます。

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